講義資料 PCアーキテクチャ編

PC選定の基礎 ― Core、Ryzen、メモリ、M.2、SSD、HDDを丸ごと理解する


1. はじめに ― なぜPC選定を学ぶのか

PCを選ぶとき、多くの人は次のような言葉で迷います。

  • Core i5なら大丈夫?
  • Core i7なら速い?
  • RyzenってIntelと何が違う?
  • メモリ8GBで足りる?
  • SSDとHDDは何が違う?
  • M.2ってSSDのこと?
  • NVMeって何?
  • 中古PCはどこまで買ってよい?

PC選定で大事なのは、名前の雰囲気で判断しないことです。

たとえば、同じ「Core i5」でも、
古い世代のCore i5と新しい世代のCore i5では性能が大きく違います。

同じ「Ryzen 7」でも、
ノートPC向け、デスクトップ向け、省電力向け、高性能向けで中身が違います。

つまりPC選定では、
CPUの名前だけではなく、世代・用途・メモリ・ストレージ・OS対応までセットで見る必要があります。


2. PCを人間の身体でたとえる

PCの中身は、難しい言葉で覚えるよりも、まず役割で理解します。

部品役割たとえ
CPU計算・処理の中心頭脳
メモリ作業中のデータ置き場机の広さ
ストレージデータを保存する場所本棚・倉庫
GPU画像・映像処理絵を描く専門担当
NPUAI処理専用AI作業の専門担当
マザーボード部品をつなぐ基板体・道路
電源電力供給心臓
OS操作環境ルール・言語

PCが遅い原因は、CPUだけではありません。

  • CPUが古い
  • メモリが少ない
  • HDDで動いている
  • SSDの容量が不足している
  • Windows 11非対応
  • バックグラウンドアプリが多い
  • ウイルス対策ソフトが重い
  • ネットワークが遅い

このように、PCの速度は総合力で決まります。


3. CPUとは何か

CPUは、PCの中心となる処理装置です。

正式には Central Processing Unit といいます。
日本語では「中央演算処理装置」です。

CPUは、アプリを開く、Excelを計算する、Webページを表示する、Zoomを動かす、ファイルを圧縮する、といった処理を担当します。

ただし、最近のPCではCPUだけでなく、次のように役割が分かれてきています。

処理内容主に担当する部品
一般的な計算CPU
画像・動画・3D処理GPU
AI処理・背景ぼかし・ノイズ除去NPU
データの読み書きSSD / HDD
複数アプリの同時作業メモリ

昔は「CPUが速ければPCは速い」と言いやすかったですが、
現在は CPU・メモリ・SSD・GPU・NPUのバランス が重要です。


4. Intel CPUの見方

IntelのCPUには、大きく分けて次の系統があります。

4-1. 従来のCore iシリーズ

よく見かけるのが次の表記です。

  • Core i3
  • Core i5
  • Core i7
  • Core i9

基本的な目安は以下です。

種類位置づけ用途
Core i3入門・低価格Web、メール、軽い事務
Core i5標準事務、学習、一般業務
Core i7高性能重めの作業、動画編集、開発
Core i9最上位クリエイター、研究、重負荷作業

ただし、ここで注意が必要です。

Core i7だから必ずCore i5より速い、とは限りません。

理由は、世代が違うからです。

例:

  • 古いCore i7
  • 新しいCore i5

この2つを比べると、新しいCore i5の方が快適な場合があります。


4-2. Intel CPUの世代を見る

Intel CPUは、型番を見ると世代が分かります。

例:

CPU名世代の見方
Core i5-8250U8世代
Core i5-10210U10世代
Core i5-1135G711世代
Core i5-1235U12世代
Core i5-1335U13世代
Core i5-1440014世代

見るポイントは、Core i5やCore i7の後ろの数字です。

たとえば、
Core i5-8250U の場合、8250の先頭が8なので第8世代です。

Core i5-1235U の場合、1235の先頭が12なので第12世代です。

PCを選ぶときは、
「Core i5です」だけでは情報不足です。

正しくは、
Core i5の何世代か
まで確認する必要があります。


5. 2026年のIntelはCore Ultraにも注意

最近のIntel CPUでは、Core iシリーズだけでなく、
Core Ultra という名前が増えています。

例:

  • Core Ultra 5
  • Core Ultra 7
  • Core Ultra 9

Core Ultraは、従来のCPU性能だけでなく、AI処理やグラフィック性能、電力効率を重視した世代です。

特にノートPCでは、次のような表記が出てきます。

  • Core Ultra 5 125H
  • Core Ultra 7 155H
  • Core Ultra 5 226V
  • Core Ultra 7 258V
  • Core Ultra 7 265H
  • Core Ultra 9 285H

Core Ultraの見方

表記意味
Ultra 5標準クラス
Ultra 7高性能クラス
Ultra 9上位クラス
U省電力ノート向け
H高性能ノート向け
HXさらに高性能なノート向け
V省電力・AI PC向けで使われることが多い

注意点

Core Ultraだから全部がCopilot+ PCというわけではありません。

Copilot+ PCとして扱うには、
NPUの性能、メモリ、ストレージなどの条件を満たす必要があります。

講義では、次のように説明すると分かりやすいです。

Core Ultra = AI時代を意識したCPUブランド
Copilot+ PC = Microsoftが定めるAI PC要件を満たしたPC

この2つは似ていますが、完全に同じ意味ではありません。


6. AMD Ryzenの見方

Intelと並んでよく使われるのが、AMDのRyzenです。

読み方は「ライゼン」です。

代表的な表記は次のとおりです。

  • Ryzen 3
  • Ryzen 5
  • Ryzen 7
  • Ryzen 9

基本的な目安はIntelと似ています。

種類位置づけ用途
Ryzen 3入門Web、メール、軽作業
Ryzen 5標準事務、学習、一般業務
Ryzen 7高性能複数作業、動画編集、開発
Ryzen 9最上位クリエイター、研究、重負荷

6-1. Ryzenも世代を見る

Ryzenも、数字で世代や位置づけを見ます。

例:

CPU名ざっくりした見方
Ryzen 5 3600古めの世代
Ryzen 5 5600まだ使える世代
Ryzen 5 7600新しめの世代
Ryzen 7 7700新しめの高性能
Ryzen 7 8700G内蔵GPUが強めのデスクトップ向け
Ryzen 7 9700XZen 5世代の高性能CPU
Ryzen 9 9950XRyzen 9000系の上位CPU

6-2. Ryzenの注意点

Ryzenも、Ryzen 7だから必ず速い、とは言い切れません。

理由は、次の要素があるためです。

  • 世代
  • ノート向けかデスクトップ向けか
  • 省電力型か高性能型か
  • 内蔵GPUが強いか弱いか
  • メモリ規格
  • 冷却性能

特にノートPCでは、同じRyzen 7でも本体の冷却性能によって実際の速さが変わります。

薄型ノートは軽くて便利ですが、熱がこもると性能を落として動作します。


7. IntelとRyzen、どちらを選ぶべきか

結論から言うと、2026年現在は
IntelかAMDかだけで選ぶ時代ではありません。

重要なのは用途です。

用途選び方
一般事務Core i5 / Core Ultra 5 / Ryzen 5以上
学校・大学業務Core i5 / Ryzen 5、メモリ16GB、SSD 512GB以上
Zoom・Teams中心カメラ、マイク、NPU、メモリ16GBを重視
動画編集Core Ultra 7 / Core i7 / Ryzen 7以上、メモリ32GB推奨
開発・仮想環境CPU性能、メモリ32GB以上、SSD 1TB推奨
AI活用NPU、GPU、メモリ、SSDを重視
試験会場PC安定性、管理性、Windows 11対応、SSD、メモリ16GB前後

メーカー名ではなく、用途に対して十分な性能があるかで選ぶ。


8. CPU型番の末尾アルファベット

CPU名の最後についているアルファベットも重要です。

Intelでよく見る末尾

末尾意味
U省電力ノート向け
P中間クラスのノート向け
H高性能ノート向け
HXハイエンドノート向け
Kオーバークロック対応のデスクトップ向け
F内蔵GPUなし
T省電力デスクトップ向け

例:

  • Core i5-1235U
    → 省電力ノート向け
  • Core i7-13700H
    → 高性能ノート向け
  • Core i5-14400F
    → デスクトップ向け、内蔵GPUなし

AMDでよく見る末尾

末尾意味
U省電力ノート向け
H / HS高性能ノート向け
HXハイエンドノート向け
G内蔵GPUが強めのデスクトップ向け
X高性能デスクトップ向け
X3Dゲーム性能などを重視した大容量キャッシュ搭載

例:

  • Ryzen 5 7530U
    → 省電力ノート向け
  • Ryzen 7 7840HS
    → 高性能ノート向け
  • Ryzen 7 8700G
    → 内蔵GPUが強いデスクトップ向け
  • Ryzen 7 7800X3D
    → ゲーム性能で人気の高性能CPU

9. メモリとは何か

メモリは、PCが作業中のデータを一時的に置く場所です。

よくある説明は、
メモリは机の広さ
です。

机が狭いと、資料を広げられません。
PCも同じで、メモリが少ないと複数のアプリを同時に開いたときに遅くなります。


9-1. メモリ容量の目安

メモリ容量2026年時点の評価
4GB基本的に厳しい。Windows 11の最低ラインで実用向きではない
8GB軽作業なら可。ただし長期利用や業務では不足しやすい
16GB事務・学習・一般業務の標準
32GB動画編集、開発、複数アプリ、長期利用に安心
64GB以上専門業務、仮想環境、AI、重い制作向け

結論

2026年に業務PCを買うなら、
最低8GBではなく、実務標準は16GB
と考えるのが安全です。

特に次のような使い方では16GB以上を推奨します。

  • ZoomやTeamsを使う
  • ブラウザのタブを多く開く
  • Excelを複数開く
  • 画像編集をする
  • Microsoft 365を日常的に使う
  • セキュリティソフトや管理ツールが常駐する
  • 長く使う予定がある

10. DDR4とDDR5

メモリには規格があります。

代表的なものが、

  • DDR4
  • DDR5

です。

DDR4

少し前まで主流だったメモリ規格です。
中古PCや少し古いPCではDDR4が多く使われています。

DDR5

新しいPCで増えているメモリ規格です。
DDR4よりも高速で、今後の主流です。

注意点

DDR4のPCにDDR5メモリは挿せません。
DDR5のPCにDDR4メモリも挿せません。

メモリは容量だけでなく、
PC本体・CPU・マザーボードが対応している規格
を確認する必要があります。


11. ストレージとは何か

ストレージは、データを保存する部品です。

保存するものは、たとえば次のようなものです。

  • Windows
  • アプリ
  • 写真
  • 動画
  • Wordファイル
  • Excelファイル
  • メールデータ
  • システム設定

ストレージには主に3種類あります。

  • HDD
  • SATA SSD
  • NVMe SSD

12. HDDとは何か

HDDは、Hard Disk Driveの略です。

内部に円盤があり、それを回転させてデータを読み書きします。

HDDの特徴

項目内容
価格安い
容量大容量にしやすい
速度遅い
衝撃弱い
動作音がある
発熱あり
用途バックアップ、大容量保管

HDDは、現在でもバックアップや大容量保存には使われます。

しかし、Windowsを起動するメインドライブとしてはおすすめしにくいです。

HDDのPCは、
「本棚は大きいが、資料を取り出すのが遅い」
という状態です。


13. SSDとは何か

SSDは、Solid State Driveの略です。

HDDのような円盤を使わず、半導体メモリにデータを保存します。

SSDの特徴

項目内容
速度速い
静音性音がしない
衝撃HDDより強い
消費電力少なめ
価格HDDより高め
用途OS、アプリ、作業用データ

現在のPCでは、
Windowsを入れるメインストレージはSSDが基本
です。

HDDからSSDに変えるだけで、古いPCでも体感速度が大きく改善することがあります。


14. SATA SSDとは何か

SATA SSDは、昔からあるSATAという接続方式を使ったSSDです。

形としては、2.5インチの四角いSSDがよくあります。

SATA SSDの特徴

  • HDDよりかなり速い
  • 古いPCにも搭載しやすい
  • 価格が比較的安い
  • NVMe SSDよりは遅い

古いPCの延命では、HDDからSATA SSDへの交換が効果的です。

ただし、新しくPCを買うなら、現在はNVMe SSD搭載モデルを選ぶことが多いです。


15. M.2とは何か

ここが非常に混乱しやすいポイントです。

M.2は、SSDの形の規格です。

つまり、M.2は速度の名前ではありません。
M.2は「形」です。

よくあるM.2 SSDは、細長い板のような形をしています。

M.2は、
「SSDの差し込み形状」
です。

M.2だから必ず高速とは限りません。

なぜなら、M.2 SSDには次の2種類があるからです。

  • M.2 SATA SSD
  • M.2 NVMe SSD

16. NVMeとは何か

NVMeは、SSDが高速にデータをやり取りするための通信方式です。

特にPCIeという高速な通り道を使うことで、SATA SSDより高速な読み書きができます。

整理すると

用語意味
SSD記録装置の種類
M.2SSDなどの形状
SATA接続方式の一種
NVMe高速SSD向けの通信方式
PCIe高速なデータ通路

重要な一言

M.2 = 形
NVMe = 通信方式
SSD = 記録装置の種類

ここを分けて説明すると、受講者の混乱が減ります。


17. SSD容量の目安

容量評価
128GB現在はかなり厳しい
256GB最低限。業務では不足しやすい
512GB一般業務の標準
1TB長期利用・制作・開発に安心
2TB以上動画、写真、大量データ向け

結論

2026年にPCを買うなら、
SSD 512GB以上
を基本にするのが無難です。

試験会場用、受付用、事務用など、保存データが少ないPCでも256GBは最低ラインです。

長く使う業務PCでは512GB以上を選ぶと安心です。


18. PC選定の基本基準 2026年版

一般事務用PC

項目推奨
CPUCore i5 / Core Ultra 5 / Ryzen 5以上
メモリ16GB
ストレージSSD 512GB
OSWindows 11 Pro推奨
画面13〜15.6インチ
用途Word、Excel、メール、Web、Zoom

学校・大学・法人向けPC

項目推奨
CPUCore i5以上 / Ryzen 5以上
メモリ16GB以上
ストレージSSD 512GB以上
OSWindows 11 Pro
セキュリティTPM 2.0、BitLocker対応確認
保守メーカー保証、法人サポート重視

クリエイター・動画編集用PC

項目推奨
CPUCore Ultra 7 / Core i7 / Ryzen 7以上
メモリ32GB以上
ストレージSSD 1TB以上
GPU専用GPU推奨
画面色再現性の高いディスプレイ

開発・仮想環境用PC

項目推奨
CPUCore i7 / Ryzen 7以上
メモリ32GB以上
ストレージSSD 1TB以上
OSWindows 11 Pro
補足WSL、仮想マシン、Docker利用を想定

19. 中古PCを選ぶときの注意点

中古PCは安く買えますが、注意点があります。

中古PCで見るべきポイント

項目確認内容
CPU世代Windows 11対応か
メモリ8GB以上、できれば16GB
ストレージHDDではなくSSDか
バッテリーノートPCは劣化していないか
TPMTPM 2.0対応か
保証初期不良保証があるか
Office正規ライセンスか
用途業務利用に耐えるか

避けたい中古PC

  • Windows 10前提のPC
  • HDD搭載のままのPC
  • メモリ4GB
  • 第7世代以前の古いCPU
  • バッテリー状態が不明なノートPC
  • 極端に安いが保証がないPC
  • Officeライセンスが不明なPC

講義での結論

中古PCは、
安さではなく、Windows 11対応・SSD・メモリ容量・保証で判断する
ことが重要です。


20. よくある誤解

誤解1:Core i7なら全部速い

正しくは、
世代と用途による
です。

古いCore i7より、新しいCore i5の方が快適な場合があります。


誤解2:メモリ8GBあれば十分

軽作業なら使えます。
しかし2026年の業務PCでは、16GBを標準と考えた方が安全です。


誤解3:M.2なら全部速い

M.2は形です。
M.2 SATAとM.2 NVMeがあります。

速いのは主にNVMe SSDです。


誤解4:SSDなら容量は少なくてもよい

SSDが速くても、容量不足になると快適性が落ちます。
Windows Update、Microsoft 365、Teams、ブラウザキャッシュなどで容量は徐々に減ります。

業務PCでは512GB以上が安心です。


誤解5:CPUだけ見ればよい

PC選定では、CPUだけでなく次をセットで見ます。

  • CPU
  • メモリ
  • SSD
  • OS
  • 保証
  • 画面
  • 端子
  • Wi-Fi
  • セキュリティ
  • 管理性

21. 覚え方

PC選定は、次の5つを見れば大きく外しません。

PC選定の5大ポイント

  1. CPU
    Core i5 / Ryzen 5以上か、世代は新しいか
  2. メモリ
    16GBあるか
  3. ストレージ
    SSDか、できればNVMe SSDか、容量は512GB以上か
  4. OS
    Windows 11に正式対応しているか
  5. 用途
    事務用か、制作向けか、開発向けか、試験会場用か

22. まとめ

PC選定で大事なのは、次の考え方です。

  • CPUは名前だけでなく世代を見る
  • Core i5 / i7、Ryzen 5 / 7だけで判断しない
  • 2026年の業務PCはメモリ16GBを標準と考える
  • HDDではなくSSDを選ぶ
  • M.2は形、NVMeは通信方式と理解する
  • SSD容量は512GB以上が安心
  • Windows 11対応を必ず確認する
  • AI PCではNPUの有無も確認する
  • 中古PCは安さよりも対応年数と保証を見る
  • 用途に合ったバランスで選ぶ

最後に一言でまとめると、

PC選定は、CPUの名前当てではなく、用途に合ったアーキテクチャ選定である。

これが理解できれば、受講者はPCのカタログを見たときに、
「なんとなく高そう」ではなく、「この構成ならこの用途に合っている」と判断できるようになります。

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